落花生とピーナッツは同じもの?違うもの?この食材には複数の呼び方があるのでちょっと分かりにくいかもしれませんね。ここでは落花生専門店の中の人が、落花生・ピーナッツの「具体的な違い」と「感覚的な違い」を紹介。落花生の歴史や別名にもふれながら、落花生を専門に取り扱ってきた経験と共に深堀していきます。…実は2つには食べ方や見た目以上に大きな違いがあるんです!
物質的には同じもの
結論からいうと、落花生もピーナッツも同じもの、同じ食品です。品種の違い等はありますが、同じ物質なので栄養価の違いもありません。…ただ、これではあっさりとしすぎなのでもっと深堀りしてみましょう!
落花生・ピーナッツの「言語」の違い
落花生は日本語、ピーナッツは英語。
落花生は日本語です。英語ではPeanut(ぴーなっと)と綴ります。複数形になると”s”が付いてPeanuts(ぴーなっつ)になります。複数形のPeanutsの方が私たちの発音する音に近いですね。
日本語か英語か、定義上の違いはただそれだけです。しかし!落花生やピーナッツと言われて浮かぶイメージは少し違うのではないでしょうか?実際にその使われ方は「言語の違い」と一言で片づけられないほど異なっています。
落花生・ピーナッツの「見た目」の違い
殻付きの「落花生」
落花生は殻が付いているイメージで使われることが多いです。また、植物としての名前や、農家さんとの会話でも落花生と言うことが多いです。また、落花生は日本語なので和風のイメージがあります。
殻も薄皮もむいた「ピーナッツ」
ピーナッツは殻も薄皮もないイメージで使われることが多いです。バターピーナッツやピーナッツバターなど、加工品の名前についていることが多く、より食品としてのイメージが強い使われ方をしています。また、ピーナッツは英語なので洋風のイメージがあります。
薄皮つきピーナッツは「南京豆」
南京豆は落花生の名称の一つで、殻をむいた薄皮付きピーナッツのイメージで使われることが多いです。「南京」は中国方面から渡来したものの意を表します。そのため南京豆は中華風のイメージがあります。
落花生・ピーナッツの「食べ方」の違い
殻付き落花生の食べ方
お店で並んでいる殻付き落花生の多くは素焼きにしてあるので、殻をむけばそのまま食べられます。
ピーナッツの食べ方
ピーナッツは殻をとってあるだけではなく、すぐ食べられるように大体が加工されています。ハニーローストピーナッツ、バターピーナッツ、ピーナッツバター、色々な味をかけたものなどたくさんの種類があります。
生の状態は「生”落花生”」
殻の有無に関わらず、生の状態はまとめて生落花生の名称で呼ばれることがほとんどで、「生ピーナッツ」という言い方はほとんどしません。会話中で「生のピーナッツ」という言い方はしますね。これは「生」を表す「raw」がまだあまり広くは浸透していないからです。ちなみに生落花生を食べるには加熱調理が必要です。
関連情報:掘りたて生落花生の煎り方と保存はこちら
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昔ながらの食べ方には日本語名がある。
殻の有無に関わらず、日本で昔から存在する加工品には名前がついています。下記3つは名前は落花生ですが殻を剥いてある代表的な加工品です。
- 素煎り落花生
- 味付き落花生(塩味の事)
- 落花糖(砂糖かけ落花生)
ピーナッツバターに相当する日本語名は無い。
逆に、ピーナッツバター(peanut butter)に相当する一般的な日本語はありません。昔は主食はほぼ米だったので、ピーナッツバターをパンに付けて食べる文化が日本になかったからだと推測しています。
落花生・ピーナッツの「地域性」の違い
他にもたくさん!落花生の名称。
落花生、ピーナッツ、南京豆、この3つが代表的な呼び方です。ほかにも、音が訛ったラッカショウをはじめ、異人豆、から豆、唐人豆、とう豆、しな豆、ほうらい豆、かんとん豆、地豆(ジーマーミ)、だっきしょ、つち豆、そこ豆、ぢむじり豆、ぢのした豆、土露子、番豆、千歳子、万寿果、など沢山の呼び名あります。これらは全て同じ落花生の事です!
なぜこんなにも多くの名前があるのでしょうか?それはピーナッツが世界へ広がった歴史が関係しています。
世界各地へ広がっていった落花生の歴史
落花生は南米のアルゼンチンの北西部周辺のアンデス山脈のふもとと言われています。16世紀以降、その高い栄養価から大航海時代の船上での食料として重宝され、そこからさまざまなルートを経由して世界各地、日本各地へ広がったとされています。その後は各地で食文化が発展したためか、今ではたくさんの名前が存在しています。
落花生・ピーナッツの「年齢層」の違い
若年層は「ピーナッツ」、高年層は「南京豆」
落花生専門店の鈴市では日々たくさんのお客様と対話しています。その中で、お客様の年齢層で呼び方がかなり違う印象を受けます。
高年層は「ピーナッツ」「落花生」「南京豆」のすべてを使います。中年層~若年層は「ピーナッツ」や「落花生」を使いますが「南京豆」は使わない傾向があります。さらに、若年層の中でもかなり若い人の中には「ピーナッツは知っているけど落花生って何?」という方もいるそうです!
最近はパン食の割合が米食を上回りパンのお供にピーナッツバターの消費も伸びているのでピーナッツの方に馴染みがある世代が増えてきているのでしょう。古い言葉がだんだんと使われなくなってきていて、世代間で馴染みの言葉が異なっているのが面白いですね!
参考資料:日本経済新聞「家計の食料品支出、パンが初めてコメを逆転」
参考資料:日本経済新聞「コメの生産低迷が定着 余剰なお、消費はパン優位」
まとめ
物質的には落花生とピーナッツは全く同じものなのに、落花生は殻付きの状態として、ピーナッツは殻を剥いた状態のイメージが強いです。この違いは文化の違いにあります。ピーナッツは英語で落花生は日本語なので、その言語圏、地域の食文化が違うから見た目や食べ方が違っているように感じるのです。(パン食文化がなかった日本ではピーナッツバターを和訳できない。)
また高年層は南京豆、若年層はピーナッツと普段発する言葉にも世代間で違いが生まれており、落花生やピーナッツの文化は時代と共に今も変化し続けています。
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